旅を歩く

街道を歩いた記録です。興味ある方はご参考に。

第5回 四国お遍路 室戸岬への道

 文中に出てくるガイドブックとはJTBパブリッシングの「大人の遠足シリーズ 四国八十八ケ所を歩く」のことです。情報はほぼ正確です。

今回は室戸岬周辺を歩きます。

 1日目 23番札所 薬王寺薬王寺温泉

 日和佐駅に着いたのは午後3時。23番札所 薬王寺は駅の近くです。写真は駅の陸橋から見た薬王寺です。駅前にはみやげ物屋、食堂など商店街がありました。駅前商店街 や門前町ではなくて道の駅でした。地方は車中心社会になってきています。

f:id:tanemaki_garden:20211220135357j:plain

 薬王寺本堂及び大師堂です。昭和時代に建てられた色鮮やかな塔が目立ちますが、他の建物は古くて風格があります。

f:id:tanemaki_garden:20211220140237j:plain

 薬王寺から眺めた日和佐の町。山の上にあるのはお城の形をした資料館。浜にはウミガメが産卵に来るそうです。静かな町でした。f:id:tanemaki_garden:20211220142302j:plain

 薬王寺には宿坊があり、温泉大浴場がついていて、日帰り入浴可能です。早速入ってみました。料金は600円。さっぱりした後、宿坊ではなく駅前のビジネスホテルに投宿。 

 当初はここから室戸岬まで通しで歩くつもりでした。このルートはガイドブックには載っていません。一般向けではないと思います。Google Mapのルート検索で表示された距離は74.2km。2日あれば歩けると判断しました。ところが薬王寺前の道標には次の24番まで91kmと表示あり。約17kmの差があります。自動車なら大した誤差ではありませんが、歩くとなると大差です。どちらが正しいかこの時点では判断できず、路線バスを調べておいて柔軟に対応できるようにしました。

 2日目 日和佐から宍喰(ししくい)まで歩き、途中で番外霊場 鯖大師に参拝。

 夕方から雨の天気予報でしたので、夜明け前の6時半にホテルを出発。宍喰まで急ぎます。旧遍路道はほぼ国道55号(土佐東街道)と重なっています。ところどころ旧道が残っていて八坂八浜と呼ばれています。つまり山を八つ越え、浜に八回降りるということです。体力温存、時間タイトなのでひたすら国道を歩くことにしました。ほとんどのところは歩道がありますが、一部 線を引いただけのところがあり、車の往来が結構多いので注意して進みます。トンネルの中で壁に張り付いてトラックをやり過ごすこともあります。

 国道に面したドライブイン、レストラン、喫茶店、ホテルなどはほとんど閉店・廃業しています。途中で食事ができる店は無いと思った方がいいでしょう。食料は日和佐のコンビニで調達してきました。

 廃業した店舗、ホテルを見ると気分が落ち込みます。廃墟ばかり見せられたらこの地域に投資する気にはならないでしょう。片づけた方が地域のためになると思うが、廃業した人に建屋を取り壊す資金はないだろうし、行政が個人資産を勝手に片づけることはできないだろうし、何かいいアイデアはないでしょうか。宿泊したホテルに聞いてみたら廃業の原因は破産ばかりではなく、高齢化が大きいのではないかと。別の言葉で言えば後継者がいないことです。人口減少、人口流出が廃墟頻出の主要因とすると将来全国各地に廃墟群が出現することになります。

 途中には写真のような絶景はあります。ただし、他の日本の風景と同様に箱庭型で、90度横を見ると工場があったりする。360度とは言いませんが、せめて180度は欲しいところです。(住んでる人の身にもなってみろと言われそう)

f:id:tanemaki_garden:20211220143052j:plain

 番外霊場 鯖大師についたのは11時半。鯖を3年食べないことで願をかけるのでこの名があります。お茶断ちとか酒断ちで願をかける話は聞いたことがありますが、鯖は初めてです。ひなたぼっこしながらコンビニで買ってきたパンとジュースで昼食。参拝者は私一人でした。

f:id:tanemaki_garden:20211220144155j:plain f:id:tanemaki_garden:20211220143723j:plain

 宍喰到着は午後2時半。思ったより早く着きました。雨の予報のせいで全力で歩いてきたので消耗しました。海岸で波を見ながらチェックイン時間を待ちます。ホテルは温泉付きでした。冷えた体には大変ありがたかった。この日は46000歩。38kmに相当します。Googleでは30kmだったので、実際の距離はGoogleの1.2~1.3倍はありそうです。Googleはたぶん道路の真ん中を測っており、歩くのは道路の端なので、カーブが多ければこの程度の差は出るのでしょう。

 3日目 宍喰(ししくい)から室戸岬

 ホテルは朝食付きだったので、得意の夜明け前出発ができず、7時半に出発して、東洋大師(明徳寺)までの9kmを歩くことにしました。雨は夜の間に通り過ぎて晴天になりました。

 朝の漁港で漁船の帰りを待っているアオサギの群れ。

f:id:tanemaki_garden:20211221151833j:plain

 途中で妙な乗り物と出会いました。この青いバスはレールの上を走っています。赤いバスは同じ型の車両ですが、道路の上を走っています。道路・レール兼用のバスです。まだ試運転中とのことでした。四国は1両編成のワンマン列車がたくさん走っているので発想としては理解できます。道路からレールの上へ脱線しないように乗るには工夫が必要と思いますが、そこまでは見れませんでいた。

f:id:tanemaki_garden:20211220150623j:plain f:id:tanemaki_garden:20211220150817j:plain

 東洋大師(明徳寺)には9時半到着。参拝者はやはり私一人。和尚さんが出てきました。一人で寺を管理しているので大変だとこぼしていました。地元では有名な方だそうです。隣には八幡神社があり、寺と神社が杉木立に囲まれて神域の雰囲気があります。和尚さんによると、昔は寺と神社は一緒にやっていた。神仏混淆(しんぶつこんこう)。それを政府が無理やり分けたのだと。(明治政府のことです)下の写真は八幡神社です。

f:id:tanemaki_garden:20211220145314j:plain 

f:id:tanemaki_garden:20211220145513j:plain

 ここからバスに乗り、夫婦岩(めおといわ)で降ります。乗客は私を含め二人だけ。しかし、料金は920円とちょっと高めで、二人では厳しいかもしれないが、5~6人乗ればペイするのではないかと思いました。

 夫婦岩には説明の石碑がありました。この日本語がよくわからないので、そのまま載せます。竜燈とは普通は不知火(船の灯火などの蜃気楼)のことですが、この説明ではここから種火を取ったとあるので不知火ではない。海の中の岩から火が出るのは考えにくい。おそらくここで祭礼を行い、儀式の中で火を起こし。それを地域住民が種火として持ち帰ったことはあったと思う。その祭礼の起源として石碑にあるような神話が作られたのではないかと言うのが私の推測です。

f:id:tanemaki_garden:20211220151810j:plain

f:id:tanemaki_garden:20211220151637j:plain

  沖縄のセイファーウタキ、宮崎の鵜戸神宮など黒潮に乗って数々の神話伝説があります。夫婦岩も古代のパワースポットの一つなのでしょう。

 ここから室戸岬まで13kmほどのはずでしたが、非常に長く感じました。こんな道を延々と歩きます。

f:id:tanemaki_garden:20211221154516j:plain

 途中 室戸(廃校)水族館に立ち寄りました。教室に水槽があり、おもに漁師さんが採ってきた地元の魚類を展示しています。手洗い場に海水を入れてヒトデなどに触れるようになっています。水泳プールに大型魚類やウミガメがいる。ウミガメの繁殖もやっているようです。図書室などそのままになっていて、かって子供たちが走り回っていた状況が想像できます。いつまでも継続して欲しいと思いました。

f:id:tanemaki_garden:20211221154713j:plain

 室戸ジオパークセンターにも立ち寄りました。入場無料。地学あり、民俗学ありでスペクトラム広すぎて焦点が合わない。欲張りすぎの印象でした。

 室戸岬に近づくと、岩がますますものすごくなってきます。どうしたらこんなになるのか、褶曲がグシャグシャです。このあたり火山は無いので溶岩ではありません。

f:id:tanemaki_garden:20211221155430j:plain

f:id:tanemaki_garden:20211221155531j:plain 

 目的地の一つ番外霊場 御厨人洞(みくろど)に到着。3年前に来た時は落石危険で洞窟には入れませんでした。今は屋根と金網ができて小さな落石なら防げるようになり、洞窟まで行けます。しかし、「自己責任で」との注釈付きです。

f:id:tanemaki_garden:20211221155702j:plain

 御厨人洞(みくろど)の内部です。ここで空海が修行していた時 明けの明星が口の中に飛び込んできて、霊感を得たとの伝説があります。上の写真では車が止まっていますが、私が洞窟に立ち入った時はいなくなっていました。パワースポット独り占めです。般若心経を読んでいたら、背後でピシッ ミシッと音がする。振り返っても誰もいません。

 洞窟は二つあり。上の写真が 御厨人洞 下の写真が神明窟です。

f:id:tanemaki_garden:20211221160509j:plain

f:id:tanemaki_garden:20211221160036j:plain

 もう一つの洞窟が観音窟です。24番 最御崎寺への遍路道の途中にあります。空海が一晩で作ったとの伝説があり、一夜建立の岩屋とも呼ばれています。今は24番 最御崎寺奥の院の位置づけです。空海が修行した洞窟については諸説あり、ここも候補の一つです。当時は海面が今よりも高かったので御厨人洞では海に近すぎて修行は無理だったのではないかとの説があります。 

f:id:tanemaki_garden:20211221162538j:plain

 これで本日の予定はおしまいで宿に向かいます。今日は35000歩でした。日和佐から室戸まで、途中バスを使いましたが、2日間の合計約8万歩になります。足の裏に水膨れが再発しました。

 宿を紹介します。岬観光ホテルは建物が「有形文化財」に指定されるほど古く、いごこちがいいとは言えませんが、なにしろ管理する人達がいい。4時頃到着しましたが、私だけのために風呂を沸かしてくれました。客は3人。そのうち食事付きは私だけで、私一人のために夕食と朝食を作ってくれました。少しでもお役に立とうと酒をたくさん飲み、カードではなく現金で支払いました。

 翌朝 ホテルの親父さんが見送りに出てきて、ホテルの前の小川にクレソンが自生していて、それを食べにカニが上がってきて、さらにそれを食べにウナギが来るという話をしてくれました。とても日本とは思えません。もし、室戸へ行かれる節は、岬観光ホテルがお勧めです。写真は岬観光ホテルの部屋の窓から撮った夜明けです。

f:id:tanemaki_garden:20211221163530j:plain

 明日は室戸三山(24~26番)と27番 神峯寺を巡ります。(つづく)